建物だけ贈与すると

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賃貸建物の贈与…収益力移転と所得分散の効果アリ!



建物だけ贈与すると
簡易構造の賃貸商業店舗など、古い建物が多い好立地の場所に、築30年の賃貸マンションがあります。建物が古いので、家賃収入は年間で1,500万円ですが、固定資産税評価額は4,000万円です。(…収入のワリに高っ!)

この賃貸マンションを、土地は親所有のまま建物のみ子に「贈与」します。建物は賃貸中なので《貸家》となり、固定資産税評価額の7割で評価されます。

固定資産税評価額は4,000万円ですから、贈与財産としての評価額は2,800万円です。そして、平成14年までの税制で算出した贈与税額は、1,224万円…高〜っ!!


さて…《貸家》の家賃を受け取るのは、土地の所有者(親)ではなく、建物の所有者(子)です。親が子に「贈与」したのは、建物ではなく《収益力》‥というワケです。

1,224万円の「贈与税」を一度だけ支払えば、以降は、毎年1,500万円の家賃収入を受け取れます。10年間で、1.5億円…こう考えると、この「贈与税」はそれほど高くありません。理屈は分かるのですが…「贈与税」、高いですね〜…。


平成15年に始まった、「贈与」の新しい制度では…通算2,500万円まで「贈与」をしても、「贈与税」がかかりません。2,500万円を超える場合に、超えた部分についての贈与税率は、一律で20%になっています。

そして、過去に「贈与」を受けた財産が、「相続税」の課税対象として再計算されます。…これでは、「相続税」の節税になりません。新制度になって、〈「贈与」を《相続税対策》に使えなくなった〜〉‥と、嘆く(?)資産家がいるかも。


しかし、先のケースを新贈与制度で考えると…貸家評価額2,800万円のうち、2,500万円までは非課税です。そして、残り300万円に対する贈与税額は、税率20%の60万円です。

年1,500万円(10年間で1.5億円)の家賃収入が、60万円の税負担で子に《移転》するワケです。この賃貸マンション…使えますね〜。

さらに…家賃収入は移転済みですから、後の「相続税」の心配はありません。相続時の家賃収入は、相続財産ではなく子の所得になっています。ただし《移転》には、「贈与税」のほか、登録免許税と不動産取得税がかかります。


このケースで、親が高額所得者である場合…家賃収入の1,500万円が子に《移転》するので、所得税・住民税の金額が減ります。家賃1,500万円の経費を300万円とすると、家賃の所得金額は、1,200万円です。親の適用税率が50%(課税所得1,800万円以上)なら、家賃に対する税額は600万円になります。

そして、子に収入が無ければ、家賃収入の所得税・住民税は300万円程度です。親の税負担が300万円減り、10年では3,000万円の大差…。子が家賃収入を貯蓄すれば、「相続税」の納税資金の積み立てにもなります。子が低所得であれば、効果絶大の所得分散です!


この《使える》賃貸マンションを、「贈与」ではなく売却しても…《移転》の効果は、「贈与」した場合と同様です。売却は、固定資産税評価ではなく、正しく定められた「時価」で行います。

この場合の課税は、子に対する「贈与税」ではなく、建物を売却した親に対する「譲渡所得税」です。そして、建物未償却残高と「時価」が同額の売買であれば、《移転》の譲渡益は生じません。つまり、譲渡課税はナシです。


親が子へ、賃貸建物のみ《移転》すると…その敷地の評価は、「貸家建付地」から、子に無償(使用貸借)で貸付けている『自用地』へと変わります。そして、原則として、評価額が上昇します。

しかし、《移転》の前からの賃借人が賃借を継続していれば…〈評価は「貸家建付地」のままで良し!〉‥と、言われています。そこで、《移転》の前に、(同族)管理会社へサブリースをしておきます。

《移転》した後も、サブリースが継続する限り、評価は「貸家建付地」のままです。

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