相続対策で生前贈与

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争族対策と破綻の秘策…相続時精算課税制度の活用



相続対策で生前贈与
相続時精算課税方式という「贈与」の制度では、贈与額が年間510万円の場合、贈与税額は55万円(税率11%)になります。子や孫など5人に510万円ずつ、20年間毎年「贈与」をすると…総額5.1億円の贈与額に対する贈与税額は、5,500万円になります。

一方、同じ金額を、子や孫などが「贈与」ではなく「相続」で受取ると…5.1億円に対する相続税額は、2億5,500万円(税率50%)になります。「相続税」と「贈与税」の差額は、2億円…スゴっ!子孫に財産を移すなら、「贈与」の方が節税になるワケです。


しかし、《相続時精算課税制度》では、「贈与」が「相続」で精算されます。

「贈与税」を払って財産を移転しても…相続時にはその財産が、相続財産と合算して再計算されるため、税額は減りません。ですから、莫大な「相続税」と向き合うことになる資産家の相続税対策には、向かない制度でしょう。

《相続時精算課税制度》における「相続税」は、贈与財産を相続財産に加えて算出した相続税額から、納税済みの贈与税額を差し引いて精算します。したがって、相続税率と贈与税率の差を使った節税は、不可能なのです。


「相続税」の税務調査では、親から子に名義変更をした預金等が問題となる場合が多いようです。納税者サイドは…〈名義変更は「贈与」でショ?…あっ!申告するの忘れてたカモ〜〉‥と主張します。そして、この預金等は…晴れて(?)時効を迎え、「相続税」の対象外となっていたのです。

しかし、《相続時精算課税制度》では…過去の贈与財産は、すべて「相続税」の対象として合算されます。《贈与税申告疑惑》の時効は撤廃され、〈「贈与」の申告を忘れたら、「相続」で税金払え〜〉‥と、言われるかも。


一方、《相続時精算課税制度》では…公開予定株式や市街化編入確実農地‥など、値上がりが確実である財産の「贈与」には、メリットがありそうです。評価は低く高収益の賃貸建物等の資産を、的確なタイミングでまとめて「贈与」すると、多額の収益をもたらす可能性があります。

《相続時精算課税制度》で「相続税」を計算する際は、贈与財産の価額は、「贈与」があった時点の価額を適用します。したがって、贈与時は1,000万円であった株式や建物が、相続時に1億円の利益を産むようになっても…「相続税」は、贈与時の1,000万円で計算されます。


相続人同士で財産を争い、《争族》になることがあります。では、被相続人が「生前贈与」によって全財産を誰かに移せば、争いは起こらない…?

民法上、「生前贈与」は『特別受益』として考慮されます。法定相続分を超えた「生前贈与」を受けていても…〈他の相続人に差額を戻す必要はない!〉‥と、いうワケです。

しかし、実務としては…他の相続人から、〈贈与じゃなくて、相続財産だろぉ〜!!〉‥と、抗議の嵐です。「贈与」が、他の相続人の損害になると知りながらも行われた場合…「遺留分減殺請求」によって、「贈与」された財産を取り返すことができるのです。


債務者が債務超過となり、担保が無い財産を「贈与」して、故意に自己の財産を減少させました。〈これでオレは、かわいそうな破綻者〉…というワケにはいきません。

その「贈与」が、債権者の『詐害行為取消権』によって、取消しとなる場合があります。債務者が、資力が有る状態で「贈与」をしたのなら、「詐害行為」にはなりません。すでに債務超過の状態での「贈与」は、ダメなのです。

多額の借金があり、債務超過の予感(?)がしたら…《事前に》多額の「贈与」をします。《相続時精算課税制度》では、贈与後に債務超過となっても、贈与済みの財産は守れるのです。
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